イタリアのタクシー全面ストライキ!!
- 舞緒ルイ
- 2017年2月21日
- 読了時間: 5分
仕事モードをオン!にした割りには、なかなか更新頻度が上がらないブログですが(苦笑)、今回は、いまイタリアで混乱の渦中となっている「タクシーの抗議運動」について触れたいと思います。
日本ではほとんどニュースになっていないようですが、先週の木曜日(16日)から勃発したこの運動も今日で6日目となっています。
分かりやすくタイトルには「ストライキ」(イタリア語ではショーペロ)と書きましたが、ストライキの場合は日時を指定して予め届け出た上で運休するのに対し、今回はタクシードライバーたちが自然発生的に始めたものなので「抗議運動」(プロテスタ)と区別して呼ばれています。
首都のローマを始め、ミラノ、ナポリ、トリノなどの主要都市で、タクシーが利用できないという状況が既に6日も続いているというこの異常事態・・・つまり、何も知らずにイタリアに来た旅行者や出張のビジネスマンたちは、空港や駅に到着して初めて、タクシーが1台もないことに困惑しているのです。
まずは空港の様子から。。。
<ローマ・フィウミチーノ空港 タクシー乗り場>

<ミラノ・リナーテ空港 タクシー乗り場>

と、こんな感じです。
次に駅の様子を見てみると。。。
<ローマ・テルミニ駅 タクシー乗り場>

<ミラノ中央駅 タクシー乗り場>

ご覧のように、通常ならタクシーが列を成して順番待ちをしているところに、1台のタクシーもいないという状況なんです!
もちろん、空港からは電車やバスといった市内へ移動する他の手段もありますし、駅からも地下鉄やバスに乗ることもできますが、土地勘のない旅行者にとって、ましてや大きなスーツケースを持っての移動となると、階段の上がり降りをしたり石畳を荷物を引いて歩くことなく、きちんとホテルなどの目的地まで送り届けてくれるタクシーは貴重な交通手段です!!
そして、旅行者に限らず地元住民や所用であちらこちらへ移動しなければいけない人たちにとってもタクシーは必要不可欠なサービスです。
そのため、今回の抗議運動期間中にも特例があって、障害者の人や病院へ行く必要がある人、妊娠中の人に限っては、慈善サービスとして無料で運行をしています。
さて、では一体どうしてこんな事態が起きているのでしょうか?簡単に背景から説明しますね。
イタリアでは、各市がタクシーのライセンスを発行していますが、都市によって人口や観光客の数、ビジネス頻度の高さは異なるので、それに相応しい数のライセンスが限定して発行されている訳です。(そのため、タクシーの料金体系なども都市毎に異なります。)
つまり全てのタクシーは個人経営(または家族経営)で、このライセンスを取得するにはそれなりのライセンス料(都市によっては家一軒に相当する値段!)を払って登録し仕事をしている訳です。
(日本のようにタクシー会社は存在しませんが、いくつかの無線会社があって各個人タクシーがその無線会社と契約をしています。)
タクシーの他に、日本でいうハイヤーも存在しますが、このハイヤー(イタリアではNCCと呼ばれています)も各市毎にライセンスを発行していて、こちらは個人経営と会社経営の2通りあります。
ところが、近年はアメリカ発の自動車配車アプリ”ウーバー”(Uber)がイタリアにも浸透し始めていて、ライセンスを持たないドライバーが自家用車を使ってタクシーと同じようなサービスを行なってタクシー業界の領域を侵し、これまでも数々の波紋を起こしてきました。
つまり、プロではない無認可のドライバーが小遣い稼ぎのために仕事をしているようなイメージです。
当然ながら違法なのですが、それでもこのサービスが発達しているのは利用者がいるからです。その上、国としても黙認していて、取り締まったり規制したりされていません。
テレビや新聞のニュースでは、今回の抗議活動もこのウーバーに対してのものであるように伝えているところも多いのですが、実際の事の発端は少し違うようです。
先週初めに議会で可決された法改正の一つに、イタリアのNCC(前述のハイヤー)が市や州を跨いで営業ができるように規制が緩和されたらしく、そうすると、例えば、南の方の仕事が少ない地域のハイヤーが大都市に出稼ぎに来られることになり、事実これまでも営業圏を超えてやって来ている車が目につき始めていたそうです。
今回は、このことに対して大都市のタクシードライバーたちが、国にこの法案を撤回するように抗議しているものだそうです。
事態を受けて国もすぐに反応し、いよいよ今日(まさにこのブログを書いている時間に)タクシー組合の幹部たちがローマで運輸大臣と面会をしているところです。
それに伴って、ミラノからも多くのタクシードライバーがローマに集結してデモを行なっている様子がニュースで流れています。
ミラノでは明日から、街を代表する一大イベントの一つ「ファッション・ウィーク」(通称ミラノ・コレクション)が始まるため、世界中からファッション関係者やジャーナリスト、モデルたちが続々とミラノ入りしていて、タクシーの需要はまさにピークを迎えます。
1週間近く続いたタクシー騒動...今日の大臣との会談で何とか解決策を見いだせることを願うばかりです。
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