- 2020年6月22日
前回のブログ執筆時に、共和国記念日について書かれているイタリアのネットニュースを見ていて、ちょっと興味深い記事を見かけました。
タイトルは『コロナウィルスと闘った57人の共和国の騎士たち』というものでした。
何の事だろう?と調べてみたところ、毎年、共和国記念日に、各分野で功労のあった個人に対して、大統領からイタリア共和国功労勲章が授与されていることが分かりました。
等級は上から順に:
カヴァリエーレ・ディ・グラン・クローチェ・デコラート・ディ・グラン・コルドーネ(cavaliere di gran croce decorato di gran cordone)
カヴァリエーレ・ディ・グラン・クローチェ(cavaliere di gran croce)
グランデ・ウッフィチャーレ(grande ufficiale)
コンメンダトーレ(commendatore)
ウッフィチャーレ(ufficiale)
カヴァリエーレ(cavaliere)
の6階級。
という感じで、名称にも大将、司令官、役員などの等級を示すものが用いられ、一番下の階級「カヴァリエーレ」がイタリア語で「騎士」を意味するものです。
そして今年は、コロナ禍において活躍した57人がノミネートされ、この騎士勲章が授与された...というお話でした。
ウィキペディアの方には、さらに、これまでの日本人叙勲者がリストアップされているので、興味のある方はコチラ(☜)にリンクを貼っておきますのでご覧ください。
一番上の階級は、専ら大統領や大統領経験者に授けられている中で、当時の平成天皇陛下(現上皇)に授与されています。また、黒澤明監督が二番目の階級を頂いていたり、小説家の塩野七生さんや建築家の丹下健三氏、安藤忠雄氏が三番目の階級を、さらにはイタリア料理の落合務シェフ、元サッカー選手の中田英寿氏が騎士勲章を貰っています。他にも、政治家や事業家、オペラ歌手など、イタリアと何かしらの関わりのあった方たちが受勲しているようです。
さて、話をイタリア人の騎士たちに戻しましょう。
57人のうち、大半は医師、看護師、研究者などの医療従事者で、さらには救急隊員や救急受付で重症患者たちに対応したスタッフたちも名前を連ねています。
例えば、コドーニョで第一号の感染者を発見して治療をした麻酔科医と女医。同じくコドーニョで毎日100キロの距離を奔走した薬剤師。また、診療所という比較的安全と思われていた場所で医療に関わるパドヴァやパルマの「ホームドクター」が、人手が足りなくなったレッドゾーンの医療現場へ、感染の危険も顧みずに手助けに行ったという話もありました。(コロナ禍の初期に、コロナとは知らずに防護策を取らず診察していて感染し、亡くなってしまったホームドクターもたくさんいました)
他にも、ミラノの大学病院の集中治療学の教授やパンデミックのシンボルにもなったクレモナの看護師(仕事を終え疲れ果ててキーボードの上で寝てしまった彼女の写真がSNSで世界中に流れたことから逼迫する医療現場の象徴として多用されました)、さらに、引退していたのに現場に戻って活躍した医師たち。

【看護師のエレナさんは自身も感染しましたが現在は回復しています】
医療関係者以外でも様々なエピソードとともに紹介されていました。
*自分の給料の全てを慈善団体に寄付したパレルモ近郊の警察署長
*廃墟となっていた5つの病院を記録的なスピードで修復させる陣頭指揮をとったヴェネト州の陸軍山岳隊長
*ローマの病院で腫瘍の治療を受けなければならないカラブリア在住の3歳の女の子を往復1300キロの距離を無料で送り届けたタクシードライバー
*休業中の自分の店でピッツアやビスケットを作って困っている高齢者に配ったり、地元の病院のために募金活動をしたカゼルタのレストラン経営者
*休業中の実家の店で祖父や父親と一緒に料理を作り、病院の医師や看護師に食事を届けたミラノの調理師学校の学生
*自分のアルバイト代で1000枚のマスクを購入し、トリノの赤十字に寄付したレバノン人のライダー
*パルマで救急ボランティアとして活動したイタリア代表ラグビー選手(コンゴ人の父を持つハーフ)
*自分が入院中にもかかわらず、遠隔でオンライン授業を続けたイスキア島の教師
*スキューバ―用のマスクを医療用に改良して実用化したエンジニア
*聴覚障害者のために読唇ができるよう透明のマスクを作ったガリッポリの洋裁店主
などなど。。。

【洋裁店主イレーネさん自身のFacebookより】
<日本で言うと・・・>
この勲章のことを知った時に、日本にも同じような褒章制度があることを思い浮かべました。
ウィキペディアによると、「社会や公共の福祉、文化などに貢献した者を顕彰するため、天皇から対象者に授与される。顕彰の対象となる事績により、紅綬褒章、緑綬褒章、黄綬褒章、紫綬褒章、藍綬褒章、紺綬褒章の6種類が定められている。」とありました。
この中の、最初の紅綬褒章の授与対象となる理由が「自己の危難を顧みず人命の救助に尽力した方」と内閣府のHPに書いてあるので、今回のイタリアの騎士勲章は、まさにこれが相当するのではと思った次第です。
日本の秋の叙勲でも、きっと今回のコロナ禍で活躍・貢献した方たちが候補に挙がるのではないでしょうか。
<その後のイタリアの状況の推移>
では、前回に引き続き、イタリアの状況レポートです。(この記事は執筆時6月22日の現地18時現在の情報を基に書いています)
過去3週間の推移を1日の増加数の週ごとの平均値で見てみましょう。(※比較しやすいように四捨五入して数値を丸めています)
*5/29-6/ 4 感染者数: 330 死者数: 80 回復者数:1,610
*6/ 5-6/11 感染者数: 300 死者数: 70 回復者数:1,350
*6/12-6/18 感染者数: 290 死者数: 50 回復者数:1,320
ご覧のように、新規感染者、死者数ともに微妙に減りつつあるものの、横這いに推移している印象です。
その中でもポジティブな話題でニュースになったのは、イタリアで感染者が最初に出てレッドゾーンになったコドーニョがあるローディ県で、先週の金曜日に新規感染者がゼロだったことです!
以下が、それを示す表となっています。

【6月19日の州別の新規感染者数一覧】
6月19日現在で、イタリアの総感染者数は23万8千人で、そのうちロンバルディア州全体で92,518人(約4割)です。
ロンバルディア州は行政上、12の県に分かれていますが、州都がありイタリア第二の都市ミラノを擁するミラノ県が、断トツで感染者も多いことが上の表からも分かります。
ミラノ県では、まだ平均して一日50~100人の新規感染者が確認されています。とにかく、一日も早くミラノでも0人となる日が訪れて、それが継続してくれたら良いのですが。。。