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イタリアのワクチン接種予約

  • 執筆者の写真: 舞緒ルイ
    舞緒ルイ
  • 2021年5月25日
  • 読了時間: 10分

更新日:2021年6月11日

日本では、昨日(5月24日)から東京と大阪で、高齢者(65歳以上)を対象に「大規模接種センター」でのワクチン接種がスタートしましたね。

東京オリンピックまで2ヶ月(本当に開催できれば)を切った今、これで状況が急速に好転してくれたら…と、様々な疑問を持ちながら日本のニュースを垣間見ていました。


今日は、イタリアでのワクチン接種予約を自分で実際にやってみて、改めて感じたことを記事にしたいと思います。


<イタリアでのワクチン接種予約>

イタリアで最初に接種が始まったのが、昨年の12月27日です。前々回のブログでも触れましたが、まずは医療従事者、高齢者施設の入所者とスタッフ、軍・警察関係者と学校教職員などの優先接種に続き、一般の80歳以上の高齢者から年代順に進みました。

その後のスケジュールは:

 ◎4/ 2~ 75-79歳(70代後半)

 ◎4/15~ 70-74歳(70代前半)

 ◎4/22~ 60-69歳

 ◎5/10~ 50-59歳

 ◎5/20~ 40-49歳(☜現在はココ)

という区切りで、接種予約を受付けてきています。


これ以外に優先されているカテゴリーは:

・国が指定する疾患(肝臓病、糖尿病、呼吸器疾患、心臓病、腫瘍など)の患者

・重度障害者

・16-59歳で医師に接種が必要と判断された人

さらに、これら持病のある人や障がい者、医師に必要と判断された人が接種を受ける場合、同居や介護をする家族3人までが一緒に接種できる仕組みになっています。本人のケアをする人の負担を減らそうという目的で、とても合理的ではないかと思います。


(※日本では、まだワクチン接種を行なう側の医療従事者の接種が完了していないことや、65歳以上を高齢者として一括りにしていることが気になります。)


では、接種の予約方法について(州ごとに多少の違いあり)、例として私の住むロンバルディア州での手順をご紹介していきますね。

以下は、州の公式ホームページの画面を、Googleサイトで日本語に自動翻訳してスクリーンショットを撮ったものです。

オンラインワクチン接種予約
<ロンバルディア州のワクチン接種予約画面トップページ(日本語で表示)>

まず、左側にあるイタリア語~ロゴとしてデザイン化されているためか、自動で翻訳されなかった部分“Più siamo, prima vinciamo.”は、ロンバルディア州の接種キャンペーンの標語で、意味は「接種する人が多いほど、早くウィルスに勝てる」です。

そして、右側の枠内に、現在予約を受付けているカテゴリーの一覧が明示してあります。

(※学校関係者と医療従事者は最初から下段に別枠になっているのも分かります。)


ここで「ワクチンを予約する」という緑色のボタンをクリックすると、健康保険証番号と個人納税番号(日本でいうマイナンバー)を入力する画面になり、次の画面で居住地の自治体や郵便番号、生年月日と携帯電話番号などを入力して進むと、居住地から近い予約可能な接種会場と日時が選べる画面になります。


ちなみに、個人納税番号には生まれ年の情報が含まれているので、この時点で予約対象の年齢に達していない場合はじかれますし、架空の番号での予約は絶対に不可です。


会場と日時を選択すると、入力した携帯番号に暗証コードが送られてくるので、そのコードを入力して認証すれば予約完了です。すぐにQRコード付きの予約番号が表示されますので、その画面を印刷すれば予約確認書になりますし、同時に携帯電話にも予約番号と一緒に予約日時と会場名が書かれたSMSが届くので、印刷ができなくても大丈夫です。

この時に、ワクチン接種をするにあたっての同意書や注意事項がリンクされているので、事前に内容を確認しておくことができます。

同意書については、会場で記入することもできますし、自宅で印刷して予め記入しておくことも可能です。


我が家は、夫が予約開始日時前にアクセスしたらフライングで始まっていた(笑)ので、すぐにオンラインで予約を試みました。タイミングが良かったのか、サイトへの接続もスムーズだったので、ものの2-3分で予約が完了しました。

(一回目の接種は来週頭の予定なので、改めてレポートしたいと思います。)

後で友人から聞いた話では、開始日の朝の時間帯はアクセスが集中して繋がりづらかったそうですが、少し時間をおいたら簡単に予約ができたとのことです。


イタリアでは、予約のための「ワクチン接種券」なるものは各自に送られてきません…つまり、予約の仕方や受付開始日時などの情報は、政府広報やテレビやネットのニュースをチェックして得るしかないのです。

必要な社会サービスを受けるためには自ら動かなければならない、いわゆる「申請主義」のイタリアと、必要なものはなんでも(アベノマスクも!)自宅まで届けてくれる日本との大きな違いですね。


では、自宅にコンピューターやスマートホンがなかったり、インターネットが使えない世代の高齢者はどうやって予約をするのでしょうか?同じく予約サイトを日本語表示してみた以下の画面を見て下さい。

ワクチン接種の予約方法(ロンバルディア州HPより)

下の段の左から:

◎フリーダイヤルでコールセンターに電話をかける(日本では自治体によっては有料の電話番号のため、長時間つながらずに電話料金が高額になったケースもあるとか!)

◎郵便局のATM端末(Postamat)で予約⇒イタリアの健康保険証はICチップが組み込まれたカード型なので、それを挿入し画面の案内に従って進める

◎郵便配達員を通して⇒自宅から外出が難しい独居の高齢者には心強い!


その他、州によっては薬局で直に予約ができるところもあったり、首都ローマのあるラッツィオ州では、昨日から薬局で接種ができるようになったとニュースで言っていました。


さて、ここで改めて日本の予約システムに対して疑問符がたくさん生まれてきました💦


ワクチン接種券は本当に必要だったのか?!

⇒各人に接種番号を割り符って郵便で送るという、各自治体の手間・労力と経費(紙代や郵送費)を考えると、非常に無駄ではないかと思います。果たして、これは省略できなかったのでしょうか?

また、日本の報道では、予約システムが複雑で分かりにくいため、本人の代わりにオンラインで予約をしてくれる子供や孫がいない人は、なかなか繋がらない電話をかけ続けるしかなく、なかには市・区役所に直に出向いたり、最寄りの病院に駆けつける高齢者もいたと聞いています。また、弱みに付け込んで「予約代行詐欺」まで出てきているという始末です。


なんのためのマイナンバー!?

⇒政府が長年に渡り温めてきたマイナンバー制度って、始まってから5年以上が経っているかと思います。昨年の特別給付金の時にも思ったのですが、デジタル化がまったく進まずに、未だに紙媒体で申請書を郵送するとか…日本はいつの間に他の先進国から遅れをとってしまったのでしょうか?

ちなみにイタリアでは、私が移住した10年前の時点で、すでに健康保険証がIC化されていて、個人納税番号(日本のマイナンバー)と紐づけられていました。



<イタリアのワクチン接種状況>

5月23日現在のイタリアの接種状況ですが、総接種数は3千万回を超え、一回以上のワクチン接種者は2千万人超(人口の3分の1、70歳以上では83%)、二回の接種が完了している人は1千万人超(人口の17%)です。ここのところ接種スピードが加速しているようで、先週7日間で約350万回(一日平均で50万回)が実施されているのですが、それでも目標値までまだまだです。


ちなみに、イタリアのニュース報道では、ワクチンの接種状況がリアルタイムで表示されていて、刻一刻と数値が変化していく様をみることができます。下の画面の右上がそれになります。表示中の数値は、少なくとも一回の接種が終わっている人数です。

5月21日の夕方のニュース画面を筆者が撮影したもの

上の写真は、5月21日にイタリア(G20議長国)及びEUの共催でオンライン形式で開催された「グローバル・ヘルス・サミット」でドラギ首相が演説をしているところで、ローマからのライブ映像のテレビを撮影しました。

このサミットの目的は、新型コロナウイルス感染症の世界的な対応から得られた経験と教訓を共有し、今後の対応における国際社会の対応を一層強化することで、「世界健康安全保障」をテーマに議論が行われた模様です。


ちなみに、日本からは、菅首相がビデオメッセージで参加したらしく、その動画(いつものように原稿を読み上げた四角四面のメッセージ)が外務省のHPに掲載されていました。


先日たまたま目にした報道で、英国は昨年の夏からタスクフォースを組んで、ワクチンの確保に動き始めていたと知りました。


日本も一年前に、オリンピックの延期が決まった時点で、ホスト国として他国に先駆けて水面下でワクチンの確保に一早く動いていたら...そして、スムーズな接種計画とそのためのシステム構築をしていたら...少なくとも今のような医療のひっ迫や医療従事者の疲弊は回避できたのではないでしょうか?!

なぜ出来なかったのか❓やらなかったのか❓・・・❓

疑問符が次々と頭の中に湧いてきます。



<イタリアの感染状況の推移>

それでは、イタリアのその後の感染状況の推移です。(この記事は執筆時5月25日現在の情報を基に書いています)


以下、過去4週間の推移を1日の増加数の週ごとの平均値で見てみましょう。

1週間のトータル数ではなく、一日あたりの数値となります。 


   * 4/23- 4/29 感染者数:12,609 死者数:312 回復者数:17,080

   * 4/30- 5/ 6 感染者数:10,427 死者数:246 回復者数:15,311

   * 5/ 7- 5/13 感染者数: 8,137 死者数:212 回復者数:16,039

   * 5/14- 5/20 感染者数: 5,586 死者数:152 回復者数:12,080 


5月に入ってから、ようやく顕著に減少傾向が目に見えてきました!一日あたりの新規感染者は、今日まで16日連続で1万人を切り、5,000人を切る日も何日かありました。昨日は月曜日で少ないとはいえ、およそ8か月ぶりに3,000人を下回りました!そして、死者数も5月16日には7ヵ月ぶりに100人を切りました!


これらを受けて、下の写真のように、今週からはイタリア全土がイエローゾーンになっています!イタリアの実効再生産数も、Rt.=0.78と1を大きく下回りました。

ちなみに、イエローから危険度無しのホワイトになる条件には、人口10万人当たりの新規感染者数が、3週続けて50人以下になることがあげられています。

そして、ニュースの報道では、来週にはホワイトになる予定の州が3つあり、このまま順調にいけば、順次ホワイトゾーンが増えていくだろうと言われています。

最新(5/24~)の危険度別イタリア色地図

さらに、ここ数日は、感染者や死者数が桁違いに少ないと思っていた日本と、数字的にほぼ変わらなくなってきていることにも驚いています。

例)5月23日のデータ:

 新規感染者数  死者数   重症者数 

 日本    4,047人    62人   1,304人 

 イタリア  3,993人    72人   1,410人 


ちなみに、日本はいまだにPCR検査数がイタリアと比べても桁違いに少ないので、無症状の陽性者が実際にはもっといるだろう、と言われていることも気になります。



<イタリアのロードマップ>

この1年3ヶ月で、繰り返し行なわれてきたロックダウンや経済活動の規制を経験してきたイタリアですが、昨年との大きな違いは、ワクチン接種が進められていることです。

政府や自治体も慎重になりつつも、「段階的な経済活動の再開」から「再始動の加速化」を視野に入れているように見えます。


以下が、新たに確定した今後のスケジュールです。

◎夜間外出禁止令

*5/19~ 夜間外出禁止の時間帯が23時-翌朝5時に(これまでは22時)

 6/ 7~ 0時-翌朝5時

 6/21~ 完全解除(予定)


◎ショッピングセンターの週末営業

*5/22~ 生活必需品以外の店舗も営業可(これまでは平日のみだった)


◎スポーツ・イベント関連

*5/24~ スポーツジムが再開(6/1~の予定が前倒し)

*6/ 1~ 屋外でのスポーツイベントが可能(最大1,000人まで)

*6/15~ テーマパークの営業再開

      室内レセプション(結婚式など)が可能 ※条件付き

*7/ 1~ 屋内のスイミングプール、スパ、ゲームセンターなどの営業可能

      屋内でのスポーツイベントが可能(最大500人)


※ナイトクラブやディスコの営業再開については、現在テスト中


こうして、ロードマップを示されることで、関連施設や経営者とそれに携わるスタッフは、目標を立てることができ、再開に向けての準備や心構えができます。


まだ、ロックダウンが完全に解除された訳ではありませんが、長きに渡る夜間外出禁止令にも、罰則があったからとはいえ遵守してきたイタリア人~ここまでよく頑張ったと思います。「あと、もう少しの辛抱」と「ワクチンとの相乗効果」で、このまま経済が順調に再始動してくれることを祈るばかりです。


飲食サービス業も、いよいよ来週からのイートイン再開に向けて、入念に感染対策を整え、期待感を持って準備中のようです。

ちなみに、飲食関係に従事している友人や知人たちは、ロックダウン中も給与の約8割が政府から直接支払われていたため、失業することなくステイホームをしながら再始動を待つことができたそうです。



<まとめ>

日本は、国民の自主的努力に頼る政策にも限界が来ているように思われ、ロードマップを示さないまま緊急事態宣言の延長を繰り返すだけでは、国民の不安や不満が募る一方です。これ以上に事態が悪化しないように、積極的な政策の推進を願ってやみません。


以上、あくまで個人の主観ですが、海外在住の一邦人からみた日本の将来を危惧する意見として記しておきたいと思います。最後まで目を通して頂き、ありがとうございます。



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