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イタリアの各業界も次々に支援へ!

  • 執筆者の写真: 舞緒ルイ
    舞緒ルイ
  • 2020年4月10日
  • 読了時間: 8分

更新日:2021年4月8日

イタリア全土が封鎖され、移動制限が発令されてから一か月が経過しました。その効果がようやく表われ始めているとはいえ、まだまだ厳しい状況は続いています。


日本でも主要都市を対象に緊急事態宣言が出されましたが、こちらでは引き続き、イタリアの状況をレポートしていきたいと思います。(この記事は執筆時4月11日の現地18時現在の情報を基に書いています)


移動制限をはじめとした企業活動の休止期間が、今週末の復活祭の連休明け(4月13日)まで延長されていましたが、昨日10日のコンテ首相の記者会見で、さらなる延長が正式に発表されました。

経済活動の休止が長引けば長引くほど、再開後の建て直しは困難を極めるため、状況を慎重に見極めつつ活動再開に向けたプランを決定するとしていましたが、4月末~5月初めにかけての連休中の国民の動きを抑えることが必須であることから、活動制限は5月3日までとなったようです。

ちなみに、今回の首相令で例外として、本屋と文房具屋とベビー用品店には営業の再開が許可されました(※ロンバルディア州を除く)。


では、この1週間の感染者の推移ですが、前回同様に1日の増加数の平均値を出してみました。(※比較しやすいように四捨五入して数値を丸めています)


 *3/27-4/ 2 感染者増加数:4,960 死者増加数:820

 *4/ 3-4/ 9 感染者増加数:4,050 死者増加数:620

 

前週からの比較では、感染者数は一日平均で900人、死者は200人も減っているので、全体的に好転している印象ですが、回復者数の平均値も1,800人ほどです。

つまり、感染者数から回復者数と死亡数を引いても、新規の感染者数の方が上回っているので、陽性患者数の数値は蓄積されて増えていっている(10万人)のが現状です。


そして、9日から10日の24時間での数値は、感染者も死者も減っていたのに、先ほど発表された数字は、いずれもまた増えてしまい、11日18時現在、感染者総数が15万人を超え、死者数は2万人に迫っています(回復者総数は3.2万人)。


この週末の復活祭も、本来であればクリスマスに次いで大きなイベントなので、1ヶ月に及んでいる軟禁生活から解放されたくて、海や山に別荘を持っている人たちが移動しないように数日前から呼びかけがあり、検問も強化しています。


さて、今日はそんな中でポジティブなニュースを集めてまとめてみました!


まずは、これまで政府が発表している主な経済支援策についてです。

3月16日にコンテ首相が発表した初期の緊急経済対策「クーラ・イタリア」(イタリア救済策)では、医療関係者、労働者、家庭、中小企業への支援として250億ユーロを投入。その直後、さらに250億ユーロを上乗せし、計500億ユーロを緊急支援資金として拠出していて、これらの資金の配分先と分配金額は詳細に規定され公表されています。


市民に直結する生活支援としては、緊急にイタリア全土の市ごとに4億ユーロを分配し、各市の主導の下に困窮している家庭を支援~例えば、一部の地域では困窮する全ての市民にパスタや小麦粉などの食料、日用品、非常時の必需品が詰まったパッケージを配布したり、スーパーや薬局で使える最低300ユーロの商品券を宅配で届けています。


4月1日には、さらに大規模な緊急経済対策として、大中小企業を対象に3500億ユーロの建て直し資金を投入すると発表されました。

医療現場と市民保護局へは医療機器、必需品のための資金、その他企業への資金投入に始まり、企業のローン返済の一時停止、納税義務の一時停止、光熱費の免除、封鎖期間中の市民生活を守るための休業補償として2人以上の企業の全社員に給与の70〜80%を支給するというものです。

また、フリーランスや個人事業主には、特別手当(一ヶ月分)として600ユーロの支給、納税義務の一時停止、子育て家族の養育費、育児休暇の拡張、ベビーシッター費用として600ユーロのクーポンの提供など細部に渡り補償が始まっています。


4月6日にはこの緊急支援資金をさらに4000億ユーロを追加(合計7500億ユーロの緊急支出)することを決定。この際にコンテ首相は、「イタリアはこのコロナ危機から立ち上がった後、すぐに全力で走り出そう!」とコメントし、企業や労働者を鼓舞しました。


一方で、募金活動や寄付金についてですが、4月11日の市民保護局の発表では、この日までに市民保護局に寄せられた寄付金の総額は約1億1,699万5,000ユーロ(約140億円)となり、これは大企業から個人まで、大小様々な寄付金が寄せ集まった数字です。

これ以外にも、赤十字社やNPO団体宛てに集まっている募金や、クラウド・ファンディングの類、教会や各地の医療機関に直接集まっている寄付金は膨大な額に上っていると聞いています。


そして、今日のタイトルに掲げたように、この危機的状況に支援策を展開している業界も多岐に渡っています。


まず、イタリア・ファッション界を代表する高級アパレルブランド『アルマーニ』の創設者ジョルジオ・アルマーニ氏(85歳)は、3月下旬に医療従事者向けに声明を出し、自身も若いころ医師を志していたことに触れながら「全力で困難に立ち向かう皆さんに感銘を受けている。我々はそばにいる。」と述べ、同社のイタリア国内の全工場で、医療従事者用の使い捨て防護服の生産を決めました。同社は早々に、病院や政府に計200万ユーロを寄付しています。


【アルマーニ社が製造した医療用防護服】


同じく高級老舗ブランドの『プラダ』も、トスカーナ州からの支援の要請を受けて、中部ペルージャの工場で、医療従事者に提供する医療用防護服8万着とマスク11万枚の生産を開始しました


【プラダ社ニュースリリースより】


同様に、有名ファッションブランドの『グッチ』でも、トスカーナ州に提供するために、5万5千着の防護服とマスク110万枚を用意すると発表していますし、『サルヴァトーレ・フェラガモ』でも、自社工場で抗菌マスク10万枚を生産中だそうです。


こうして、著名なトップブランドのコレクションの商品を作る熟練の職人たちが、医療用の衣類やマスクの製作に従事するなんて、1ヶ月前には想像もできませんでした!


他にも、イタリアの高級車メーカー『ランボルギーニ』が、自社でマスクを製造し、地元ボローニャにある医療機関に提供すると発表しました。ランボルギーニ社によると、すでに車のインテリアとカスタマイズを担当する室内装飾部門で1日1000枚の外科用マスクを生産しているほか、複合素材を扱う製造工場と研究開発部門では3Dプリンタを活用して、1日200個の医療用保護シールドも生産していて、ボローニャの病院に直に納品しているそうです。

ランボルギーニ社は、マスクとシールドを製造するにあたって、ボローニャ大学医療外科の協力を得ており、検証テストによって医療品としての品質チェックを満たしたうえで製造を行なっているとのことです。

また、本社ビルをイタリア国旗をイメージした三色でライトアップして、イタリア全土での意思統一を促しています(カバー写真)。


【ランボルギーニ製の医療用マスクと保護シールド】

同じく、高級車メーカーの『フェラーリ』も、人工呼吸器を生産する企業への支援を表明し、自動車大手メーカーの『フィアット・クライスラー・オートモービルズ』と自動車部品サプライヤーの『マレッリ』が、フェラーリ社と一緒に、人工呼吸器の生産に携わるというニュースが報じられました。


そしてこの3社は、イタリアの人工呼吸器メーカー『シアーレ・エンジニアリング・インターナショナル・グループ(以下シアーレ)』と協力し、シアーレのパーツ生産をサポートすることになりました。

シアーレは1974年創立の医療器具メーカー、人工呼吸器分野ではイタリア最大規模で、病院用・携帯用含め12機種をラインナップしています。

シアーレの創業者であるプレツィオーザ会長は、「人工呼吸器と自動車産業の共通点として、いずれもエレクトロニクスとゴム双方に高いノウハウが必要であること」を挙げています。また、「車のエンジン工場を活用することで、製造にかかる期間を大幅に短縮できる」ということです。この“異業種間コラボレーション”によって、月産500基の人工呼吸器が生産可能になると報じられ、すでに稼働し始めています。


この他にも、リキュール酒造メーカーの『カンパリ』は、アルコール消毒剤1万5千本を製造し、被害が最も深刻な北部ロンバルディア州の病院に提供しました。

また、高級宝飾品ブランドの『ブルガリ』は、香水メーカーと提携して、消毒ジェルを生産して医療現場へ届けています。


【ブルガリ製の消毒ジェル】


イタリア政府は3月21日の首相令で、生活に直結しない産業について「企業活動の休止」を命じており、各企業は実質的に生産を中止をしていたため、アパレルメーカーも自動車関連メーカーも工場の稼働を停止していました。


そして今、自国の危機的状況のために何か力になれないかと、じっとしていられずに立ち上がり、それぞれの特性を活かして行動に移し、最前線で闘っている医療関係者に直接に支援する形で協力しているという訳です。


アルマーニ製の防護服を着て、プラダ製のマスクとランボルギーニ社の保護シールドを身に着けた医師が、ブルガリ製のジェルで消毒して、フェラーリ社の人工呼吸器を患者に装着。。。想像しただけで超ラグジュアリーでお洒落~こんな医療現場はイタリアにしか存在し得ないことでしょう!


「こうやってイタリアを代表するたくさんの企業が支え合っている限り、大丈夫、きっとすべてうまくいく!」と思わずにいられません。。。



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