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イタリア全土で商業活動や飲食業の再開!

  • 執筆者の写真: 舞緒ルイ
    舞緒ルイ
  • 2020年5月19日
  • 読了時間: 7分

更新日:2020年5月26日

土曜日の夜(5月16日)に行われたコンテ首相の会見は、久しぶりに報道陣を集めて行なわれたものでした。あえて屋外(首相官邸の中庭)にて、数社に絞られた記者同士の間隔もあけて設置されている光景が印象的でした。

ロックダウンされてからは、会見はテレビとインターネット中継のみで行なわれ、記者からの質問も、先週まではリモートのビデオ電話方式が採用されていたからです。


【記者の質問に答えるコンテ首相(左)/16日の記者会見の模様(右)】

段階を追って元の生活を取り戻そうとする「フェーズ2」の次のステップ=商業活動や博物館・美術館などの再開が5月18日から始まるにあたり、6月1日から予定していたレストラン・カフェなどの飲食店や、美容・理容院、エステなどを含む店舗営業を前倒しして、これらも一斉に5月18日から再開可能にするとの発表があったのです。


他に18日から再開可能な活動は、ミサなどの宗教活動、スポーツにおけるチームでの練習、そして、少し早い感じはあるけれど海水浴場・・・早速ビーチにおけるソーシャルディスタンスについても盛んに報道されています。

さらに、5月25日からはプールやジムなどのスポーツセンターも再開できることになっています。

ちなみに、映画館や劇場など、屋内で大勢の人が集まるような施設の再開予定は、6月15日からと、まだ様子を見てのスケジューリングのようです。


中でも一番に驚いたニュースは、6月3日からイタリアが国境をEU諸国に対して再開放する、というものでした。

これまでは、特別な理由があって、それを証明できる場合のみ、県外や州外へ行くことが許可されていた移動制限でしたが、それが早くも来月から(イタリアでは6月2日が祝日で飛び石連休となるので、その連休明けで3日になった模様)、EU圏内に限定されているとはいえ、国外との行き来(相手国の入国条件にもよる)を可能にするというのです。

この背景には、15万人といわれる東欧からの季節労働者の受入れと、イタリアGDPの13%を占めている観光産業を何としても崩壊から防ぎたい、といった意図があるようです。



<数字で見るイタリアの状況の推移>

では、この政府の決定の背景にあった指針=その後のイタリアの状況をレポートしたいと思います。(この記事は執筆時5月19日の現地14時現在の情報を基に書いています)


まず、前回のレポート以降の2週間の推移を見てみましょう。1日の増加数の週ごとの平均値は、比較のために3週間前からのものです。(※比較しやすいように四捨五入して数値を丸めています)

 

  *4/24-30 感染者数:2,210 死者数:350 回復者数:2,620

  *5/ 1- 7 感染者数:1,490 死者数:280 回復者数:2,900

  *5/ 8-14 感染者数:1,030 死者数:200 回復者数:2,530


ご覧のように、新規感染者数は2週間で半分以下となり、死者数も6割弱と引き続き減少が顕著にみられます。

これは1週間の総数ではなく、それを7で割った一日の平均値なのでお間違えなく!(日本の数値と比べると桁違いなので念のため。。。苦笑)


そして、昨日まで6日連続で新規感染者数が1,000人を切り、昨日(18日)発表された数字は451人と500人を下回ったのは3月3日以来、死者数は99人と100人を下回ったのは3月9日以来で初めてでした!


もちろん、政府が指針としているデータはこれだけではありません。陽性率やICUの患者数など他の数字も合わせ、専門家の意見を交えた総合的な判断となります。

 

前回同様、以下に昨日(5月18日)更新された最新の折れ線グラフを貼り付けています。

赤線が新規感染者、緑が回復者、グレーが死亡者、サーモンピンクが現状の陽性者数を表しています。

【この2ヶ月間の推移を表す折れ線グラフ】


一番右に書かれている数字が、昨日(5/18)発表された前日からの増減数です。

このままのペースで良いので、確実に新規感染者も死亡者数も減っていってくれることを願うばかりです。

【この2ヶ月間の累積傾向を表す折れ線グラフ】


右端の数字は、昨日(5/18)発表された各項目の総数です。安定して回復者数(緑線)も出ているため、5月6日時点で折れ線が交錯して以降、現状の陽性者数(サーモンピンク)を上回り続けています。


ちなみに、6万6千人以上の陽性者のうち、入院患者数は約1万人余り、集中治療患者が749人、それ以外は自宅療養者となっています。



<新しい生活スタイル>

2ヶ月以上に渡る規制下での生活に、多くのイタリア人は我慢してストレスを貯めつつ、不安を抱えながら自宅に篭って過ごしていました。

昨日からは、様々な条件付き(公共の場での対人距離やマスクの着用、入店時のアルコール消毒など)とはいえ、普通に外出して買い物をしたり、カフェで友達とお茶を飲んだり、家族で外食することができるようになりました。


私も久しぶりに、スーパーへの買い出し以外で近所を散策してみました。もちろん、規制が緩和されたとはいえ、上記のデータの通り、新規感染者や陽性者がまだ多数いるので、充分に警戒する必要はあります。

警戒するのはお互い様で、人と道ですれ違う際にも端と端に分かれて距離を保つ習慣は身についたままです。


【マスクを付けて対人距離を保ちながらベンチで日光浴する人たち】


そして、目についたのが自転車で移動する人が多かったことです。公共交通機関の混雑を緩和するため、自転車での通勤や移動を推奨しているという話は耳にしていました。

実際に4月末から、ミラノ市内では自動車道路から「自転車専用道路」への転用という形で工事が進められているのです。

さらに最近、新規で自転車を購入する人には、申請すれば60%の補助金(上限500ユーロ)が補填されるというニュースを見て驚きました。


【自転車で移動中もマスクを着用する人々】


近年では、排気ガスによる空気汚染が問題になっていた街なので、そういう意味では一石二鳥のような気もしますが、自動車や歩行者との接触事故などが増えたりしないか心配だったりもします。

また、ミラノ市内はトラムが網羅されていて、上の写真にも見られるように路面にレールが敷かれているところが多いため、自転車の車輪がレールに嵌ったり滑ったりして、注意が必要です。



<公共交通機関では>

地下鉄やバス・トラムといった公共交通機関では、ソーシャルディスタンスを維持するために、乗車人数を制限したり、停留所や車内などにマーキングが付けられています。

今までは整列して並んだりする習慣のなかったイタリア人も、さすがに人との蜜を避けるために守っているようです。


【地下鉄では座席も間隔を空けて(上)/バス停にもマーキング(下)】



<ニュースで見る実情>

営業再開のゴーサインは出たものの、経営者サイドにしてみれば手放しで喜べることばかりでもありません。例えば、レストランやカフェでは、テーブルとテーブルの間隔を空けるためにテーブルや座席数を減らしてレイアウトを変えるなどの工夫を余儀なくされます。当然、集客量は半減またはそれ以上に減るところがほとんどでしょう。


そして、再開したからといって、すぐにお客さんが戻るという見込みも保証もありません。この2ヶ月の外出禁止期間で、人々の間からは外食の習慣がなくなり、自炊生活が身についてしまったことに加え、他人と接触して感染するリスクがなくなった訳ではないからです。


特に、観光都市や観光客相手の商売は、問題がより深刻です。仮に、予定通りEU間での国交が再開したからといって、すぐに旅行者が観光目的でやってくる見込みも保証もありません。加えて、今回のコロナ問題は、イタリアだけでなく他のEU諸国中に拡大している訳ですし、さらに言えば、ここ近年のイタリアの観光収入を支えてきたのは、むしろEU圏外の国からの旅行者が主だったからです。


中には、すぐに活動を再開せずに様子を見る商店や飲食店もあるようですし、再開させたくてもその操業資金にも困っていて開けられない店舗も少なくないとか・・・



<今後の懸念と課題>

コンテ首相が記者会見でも述べたように、油断してまた感染状況が悪化してしまった場合には、再び封鎖せざるを得ない可能性も十分にあります。

世間では、まだ時期尚早なのではないかという慎重派もいれば、遅すぎたくらいだと批判している人たちもいます。


土曜日の記者会見から一夜明けた日曜日、爽やかな初夏の陽気で、市内の公園には沢山の家族連れや若者で溢れていた映像がニュースで流れました。


お隣フランスでは、先週11日から学校が再開したそうですが、イタリアでは9月の新学期までの休校継続が決まっていて、実質的にこのまま夏休みに突入です。2月末から休校になっていた子供・学生たちは、約3ヶ月ぶりに友人との再会が可能になったので、こういった現象も致し方ないことなのだと思います。


一方で、普段でも3ヶ月と長い夏休みが、今年はなんと半年になる訳です!もちろん、この間もオンライン授業が行われているようではありますが、実際には学校によってバラつきも多いと聞いているので、イタリアの若者の学力の低下が将来に響かなければいいなぁと懸念する声も少なくありません。


何はともあれ、当面の間はウィルスと共存していかなければならない訳なので、引き続き気を引き締めて注意しながら、一人一人がルールを守って自分にできることをやっていくことが感染の再拡大を防ぐ唯一の方法ではないかと思っています。



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