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ドラギ新首相てどんな人?

  • 執筆者の写真: 舞緒ルイ
    舞緒ルイ
  • 2021年3月1日
  • 読了時間: 5分

更新日:2021年3月12日

前回のブログでは、年明け早々にイタリア政界で起きた首相交代劇について触れました。では、新しく首相に就任したマリオ・ドラギ氏はどんな人物なのでしょうか?

私自身、「えっ、誰それ?」といった感じで名前を聞いた事もなかったのですが、おそらく日本では、ほとんど知られていない存在ではないかと思います。


<新首相の経歴>

第67代・イタリア首相となったマリオ・ドラギ氏は、1947年、ローマ生まれの73歳。

実は、15歳で両親を亡くしてからは、妹弟と一緒に親戚のところで育ったという苦労人。敬虔なカトリック信者でもあるそうです。


ローマのラ・サピエンツァ大学を卒業後、1976年に米国のマサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。

1981~1991年:フィレンツェ大学で教授を務める傍ら…

1984~1990年:世界銀行ワシントンD.C.)エクゼクティブ・ディレクター

1991~2001年:イタリア財務長官経済財務省総務局長

2002~2006年:米国ゴールドマンサックス副会長

2006~2011年:イタリア銀行総裁

2006~2009年:金融安定化フォーラム議長

2009~2011年:金融安定理事会の初代理事長

2011~2019年:欧州中央銀行(ECB)総裁


という風に、経済学者、銀行家として華麗なキャリアを重ね、経済だけでなく教育や外交の知識も豊富なので、財務長官時代も歴代の首相と渡り合ってきたという超エリート


中でも、欧州債務危機の真っ只中だった2011年に欧州中央銀行(ECB)総裁に就任した際には、大規模な量的緩和やマイナス金利など異例の金融緩和策を断行し、混乱していた債券市場を沈静化したことから、その危機封じ込めの手腕は「ドラギ・マジック」ともてはやされ、「ユーロ(通貨)の救世主」とか、「スーパーマリオ」などとあだ名されるようになりました。


特に、2012年7月にロンドンで行なった講演で、欧州中央銀行は、ユーロを救うためなら必要なことは何でもする準備はできている 」(the ECB is ready to do whatever it takes to preserve the euro)と発言したことで、欧州のみでなく、世界中に知られるようになったそうです。


2014年には、米フォーブス誌に「世界で8番目にパワフルな人物」として掲載され、翌2015年にはフォーチュン誌で「世界で2番目に偉大なリーダー」にランク付けされました。


<ユーロ紙幣に印刷されているドラギ氏の署名>

実は今回のことで初めて知ったのですが、私たちが普段使っているユーロ紙幣には、ECB総裁の署名が入っているのです。

【新5ユーロ札にサインを入れるドラギ前ECB総裁】


上の写真は、2013年1月に新しい5ユーロ札のデザインが発表された時のものです。実際にご本人がマスコミの前でサインをするパフォーマンスを披露したようです。


現在EUでは、下の写真のように2種類の紙幣が出回っていますが、新札と旧札では署名のしてある位置が変わっています。分かりやすく赤丸で囲みました。

【上:旧50ユーロ札、下:新50ユーロ札】


私も早速、手持ちの紙幣を調べてみましたが、ほとんどがこのドラギ氏の署名入りのものでした。中には、ドラギ氏の前任者や後任者のものもあるのですが、何しろドラギ氏の在任期間が長かったので、現在流通している紙幣の大半を占めているのでしょう。

もし、皆さんもご自宅に以前ヨーロッパに旅行で来られた時のユーロ紙幣が残っていたら、ぜひチェックしてみて下さい(笑)


<日本のスーパーマリオは?>

こんな経緯から、今回のイタリア首相就任のニュースで、欧米のメディアなどは「スーパーマリオが帰ってきた!」というタイトルを掲げているものを多く目にしました。


さて、スーパーマリオでふと思い出したのが、5年前のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式の一場面です。きっと皆さんも記憶されている方が多いのではないでしょうか?


そう、日本が誇るゲームキャラクターのスーパーマリオに扮して登場し、観衆をアッと驚かせた当時の日本国首相、「安倍マリオ」です!

【2016年リオデジャネイロ・オリンピック閉会式】


結局、昨年の東京オリンピックも延期され、今年も開催ができるのかどうか・・・問題は山積みで微妙な感じですが、安倍前首相は「スーパーマリオ」どころか、コロナ禍に実施した「アベノマスク」で世界中から失笑を買ってしまいましたよね(苦笑)


ドラギ氏については、スーパーマリオがスーパーマリオであり得たのは、中央銀行業の知的空間の中においてのことであって、果たして、イタリア政界において、その神通力が通用するかどうかは現時点では何とも見極めがつかないと言われています。


ただ、こんな切り札的な人材がイタリアにはいて、このような配役が可能だというところには救いがあるし、その起用を思い切れる指導者がいるあたりが、なんとも羨ましいと思ったのは、私だけではないはずです。


イタリアでは過去10年で7度目となった内閣交代~安倍前首相が長期に渡り在任して(居座って)いた日本よりも、そこだけみると政治的に不安定ではあります。


でも、2月17日の所信表明演説で、ドラギ氏は「政権は日数ではなく質と運営者の勇気で評価されるべきだ」と述べ、欧州連合(EU)と連携してコロナ禍からの経済復興に努めることを約束してくれました。

とにかく今は、このイタリアのスーパーマリオ政権に、大いに期待したいと思います。



<イタリアの感染状況の推移>

では、イタリアのその後の感染状況を数字で比較してみたいと思います。(この記事は執筆時2月28日現在の情報を基に書いています)


過去4週間の推移を1日の増加数の週ごとの平均値で見てみましょう。

1週間のトータル数ではなく、一日あたりなのでお間違えなく!! 

 

   * 1/29- 2/ 4 感染者数:11,706 死者数:409 回復者数:17,631

   * 2/ 5- 2/11 感染者数:12,280 死者数:355 回復者数:15,532

   * 2/12- 2/18 感染者数:11,716 死者数:308 回復者数:14,338

   * 2/19- 2/25 感染者数:14,718 死者数:298 回復者数:12,756 


2月に入っても横ばい状態だった感染者数が、また増え始めています💦

2月1日から「イエローゾーン」になっていたミラノでは、この3週間の人出が増え、繁華街や広場等での密集が起きていたことから、またリバウンドが起こるのではないかと懸念されていたのですが、その通りとなってしまい、今日3月1日より再び「オレンジゾーン」に逆戻りとなりました😢


これで、当分の間は外食どころか、カフェでお茶もできなくなってしまったのです!

そのあたりのレポートは、また日を改めて記事にしたいと思います。



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